こんなに違う! イタリアと日本の大学の違いとは? 覚えておきたい7つの異なる特徴

本日のライター


名前
 Roku

イタリア在住歴
 2004年~2010年
 

こんなにも違う海外の大学事情


アートやファッション、音楽など分野で人気のイタリア留学ですが、英語圏の大学にくらべて情報量が少なく大学選びが難しいエリアでもあります。今回はイタリアと日本の大学の違いを7つご紹介します!

1. 誰でもいつでも入学できるのがイタリア式


 日本の大学では高校卒業と同時に大学進学を決める人がほとんどですが、イタリアの大学は「学びたいものが見つかったら進学する」というスタイルの人が圧倒的に多いです。

 というのも、日本のように高校を卒業した段階で進学を決めるのではなく、就職や専門学校を経てから大学に入るというのが一般的だからです。1年次に入学する年齢もまちまちなので、18歳~40歳くらいまで幅広い年齢層と学ぶことができるので、とにかく人間関係が新鮮だといえるでしょう。また、休学についても寛容なので、同級生が突然2年間休学をし、あとから戻ってくるということもしばしばあります。編入や転学をする人も多い自由な雰囲気です。

 こうした背景には、イタリアでは【大学=専門的なことを学ぶための機関】という認知がされていることが大きく関係しています。実際に20代~40代の学生が多数在籍しているので、すでに日本の大学を卒業している社会人の方でも留学しやすい国といえるでしょう。

 日本人に人気なのはやはり音楽(声楽・絵画等)、次いでファッション関連といわれていますが、イタリア国内でも地方都市の場合は日本人留学生に会うことは稀です。「日本人のいない国で勉強したい」という方はぜひ、地方都市の大学も視野に入れてみてほしいです!幅広い世代・国からの留学生がいる環境で学ぶことができますので刺激のある充実した留学経験が期待できるでしょう。

 ちなみに医療系や特殊学部を除き、年齢の制限を設けていないこともあり、お子さんが大きくなってから学びなおすシニア層もちらほらいらっしゃいます。(※わたしがイタリアにいた時の最高齢の同級生は68歳でした)



2. 誰でも卒業できないのもまたイタリア式


イタリア国内で日本の高等教育にあたるまでを済ませた人は「マトゥリタ(Maturita)」という国家試験を受ける必要があります。いわば日本の共通テストのようなものですが、この試験に合格していれば、希望した大学に入れるという特殊な学校システムが確立されています。そういう事情もあり、いったん就職をしてから大学へ入るというのが一般的ではあるのですが、このような「門扉は誰にれも開かている」という入学時の状況とは大きく変わり、卒業まではいばらの道といわれています。

 基本的にイタリアの大学は日本の教養課程にあたる内容が約3年間、その後さらに専門的な知識を学ぶのが学部により2年~4年程度なので、とんとん拍子に進んだとしても卒業までには6年ほどかかるケースが多いです。また日本のようにゼミに出席していれば単位が取れるというようなことはほぼなく、試験以外にも面談やプレゼンテーションなどをパスしないと進級ができないという厳しさです。

 なお、友人のイタリア人学生は入学後1年次で留年再度1年をやりなおす→2年目で休学→2年間自分探しの旅へ→2年目をやり直す・・・・のような特殊な通い方をしていました。本人曰く「卒業したら35ぐらいになっちゃうな!」とのことだったのですが、その後彼が卒業したことを願わずにはいられません。

  イタリア国内の大卒者人口は2023年のデータによるとわずか19.23% 日本は50%以上ですから、「卒業する」ということの難しさがよくわかります。

3. イタリアは「成績重視」!日本の単位制度の違い


 日本の大学で単位を取得する際に重要視するのは【出席率】【レポート等課題の内容】そのほか【技術的な習熟度】といわれちますが、イタリアの大学では「出席」というもの数値化するという習慣がありません。単位は科目ごとに設けられているものの、その取得に必要なものは「成績」一択なのです!

 一部の大学では入学時に通学か通学なしかを選べるようになっているのですが、こうした背景には大学自体の少なさや、交通事情が関係しています。 日本には2023年時点で793校の大学教育機関がありますが、イタリアにはわずか90校程度しかありません。(出典:日本の大学数/旺文社情報センター)

 ミラノやローマなどの都市部は物価が高いこともあり、自宅からの通学者が多く、2時間以上かけて通学しているという学生も少なくはありません。そのため、全日程を通学とせず、試験日以外は通学なしで履修生として登録する方法が昔から定着しています。新型コロナウィルスが流行した際も都市のロックダウンはあれども、もとより在宅での学習スタイルが定着していたこともあり、インターネットを通じた履修補助やサポートを比較的簡単に履修できたというメリットもあったようです。

 「成績一択」ということは、基準に満たない生徒は留年をすることになるのですが、イタリアの学生にはあまり「何年生である」という意識がありません。必要な単位を修得した段階で進級する、というイメージで大学に通っている人も多く、こうした側面から見ると日本よりも学ぶことについて意欲的とも考えることができるでしょう。



4. 学校の雰囲気の違い


 ここまででイタリアの大学が卒業しにくく学力次第、そして出席率を見ないというところまではお判りいただけたかと思いますが、学校の雰囲気も日本とはちょっと変わっています。

 まず、総合大学の場合は学校内にチャイムがないことがほとんどです。講義は何時からか、という情報は学校公開の生徒向けサイト等からも確認はできるのですが、始まる時間や終わる時間については日本の大学のように定時で授業が開始するという運用がなされていないことが多いです。たとえば研究室等の場合は、教授により時間の感覚がことなるので、遠くから通う生徒が多いというゼミであれば午後から登校とか、個人の判断でスクーリングをするというような臨機応変さもみられます。

 キャンパス内はつねにオープンな空間となっており、地域の人が気軽に通えるような社会人コースのような催しや、有名な作家が来校してのシンポジウムなども頻繁に開催されています。学生の出身国・年齢も様々なため、学校内はとても開放的な雰囲気があり、地元の人なのか、学生なのか先生なのか区別がつかない事もしばしばあります。

5. 大学卒業の後はどうなる?日本とイタリアの就職事情


 日本では大学を卒業した段階で就職する人の比率は高いのですが、イタリアの大学では「卒業していないのに就職が決まる人」というのがちらほらいます。

 日本のように3年次で一斉に就活が始まり、4年目はほぼ就活と卒論>卒業というスタイルではないため、大学に通いながら働いている人や、学校に在籍しながら仕事を転々としている人、卒業後の就職が確約されている状態(日本の内定に近いですが、すでに実務的な内容を行っている)で通学している人もいます。

 日本では学士4年>修士が2~3年/博士が2~3年ですが、イタリアの場合は学士にあたる部分が3年、その後の修士にあたる部分が2年~4年、さらに専門的な学問を学ぶ博士課程は2年以上 となり、具体的な期限が明確となっていない場合が多いため、一度大学入ると6年~10年在籍しているという人も珍しくはありません。

 そのため、卒業の区切りで社会人になるというようなライフプランが一般的ではないように感じます。学士過程の3年を雇用条件にしている企業もあることから、日本の学校制度や就職・進学状況とは根本的に違う部分が多いので、現地就職を目指す場合には注意が必要です。



6. 留学後の生活はどうなる?大学生の生活の実態


 日本では首都圏や関西などの都市部に大学が集中していることから、多くの学生は進学とともに一人暮らしをする傾向にあります。特に首都圏の大学では東京近郊で3年次を過ごし、4年目だけ都内のキャンパスという学校も多いですが、イタリアでは自宅からの長距離通学を選ぶ学生が多いです。

 学校制度の違いがありそもそも大学生は毎日学校へ行く必要がないこともあり、長距離通学が常態化しています。一方専門分野でイタリア国外から留学してくる生徒たちの多くは学校の敷地内や近隣の寮で生活をしているので、交友関係もおのずと留学生中心になってきます。

 近年イタリア国内の大学にはアジア(韓国・中国・インドネシア)、中東(イラク・イラン・モロッコ)等の留学生が増えてきていることもあり、特に医療や工学などの専門分野や芸術(音楽・絵画・ファッション)のような特殊な授業が多い場合には学校への通学は必須となっていますので、日本と同じように学校で過ごす時間が多くなることでしょう。

 そもそも日本より大学数が少なく、古都にある大学が多いため、日本のように電車などでの通学がしやすいというような立地条件は稀です。生活費をなるべく安く済ませるには大学提携の外国人向けの寮を選ぶとよいでしょう。

7. 語学の必要性は?イタリアの大学は英語はいらない?


 日本の大学生は、入学し卒業するまでの間で英語へ触れる時間が非常に少ないといわれています。一部文献等の読解や作成において英語が必要な学部があるものの、進学先によってはほぼ英語を使わずとも卒業することができます。

 一方、イタリアの大学の場合は、若い世代の多くが英語を話すことができます。実はイタリアでは年配の世代ほど、イタリア語しか話せないという傾向があるのですが、近年は諸外国からの留学生の増加やSNS、インターネットの普及に伴い英語でのコミュニケーションが日常化しています。

 イタリアの大学へ留学する場合はIELTSなどの国際英語資格が出願条件になっていることが多いですが、実際に生活するうえでも多国籍の学生間で英語を公用語しているため、イタリア語よりも英語を話す時間が多いという学部も存在します。学校周辺の施設では外国人の雇用も積極的なので、スーパーなどでも英語が通じることがありますが、郊外や地方都市に行くとイタリア語以外は通じないという不均衡が生じていますので、やはりイタリア語と英語、どちらも一般的な会話ができるレベルで留学をする方がよいでしょう。

終わりに


いかがでしたか?日本にいると、大学へ行くという選択肢はどうしても「就職ありき」という側面が強いですが、イタリアの学校は自分の学びたいものを学ぶために十分な時間を使うことができる、という見方ができるはずです。もとよりおおらかで自由を好む国民性ではありますが、ヨーロッパ留学の候補として是非イタリアに興味を持っていただけたら嬉しいです。

~ イタリアと日本/大学の違いのまとめ ~

  • イタリアの大学は入るのは簡単。
  • イタリアの大学は卒業までがいばらの道。
  • 通学なしでも単位取得ができるけれど「成績重視」勉強をしないと卒業はできない。
  • とにかく自由な雰囲気で年代、国籍が幅広い
  • 日本のように4年間で卒業、という人は稀。
  • 長距離通学で通うイタリア人/寮から通う留学生が多い。
  • イタリア語はもちろんだけど英語も勉強しないといけない

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