イタリア人のように人生を楽しんで生きるには? イタリア流楽観的思考を取り入れる秘訣

イタリア人は人生が楽しそう?


この世界には多くの国が存在します。各国の国民に対する典型化されたイメージは、遠い昔から風刺画やジョーク等でも用いられています。

例えば典型的日本人像は、「おとなしい・勤勉・真面目・シャイ」といったものが大半です。反対に、イタリア人は「情熱的・楽観的・社交的・ロマンティック」と、日本人とは正反対の国民性として語られる事が多いと言えます。

もちろん性格は人それぞれ異なり、一概にまとめる事はできませんが、傾向としてイタリア人は「陽気」である人が多く、テンプレート化された各国の国民性もあながち間違いであるとは言えません。

学校の授業で世界史を学ぶことができても、国の習慣や文化背景までは教科書では学べないので、なぜイタリア人はいつも人生が楽しそうなのか?長年疑問に思っている方も多いかもしれません。

本記事では、そんな気になる「イタリア人の人生が楽しそうな理由」を皆さんに少しだけご紹介したいと思います。

各国の自殺率の比較


各国の自殺率のデータは国民の不幸度の指標とする事ができます。以下のグラフは2016年の自殺率のデータです。

ご存知のように、日本や韓国、ロシアは自殺者の多い国です。このグラフからはイタリアは、フランスやドイツなどの他の西欧諸国よりも自殺率が低く、日本の半分以下の数値である事が分かります。

引用元:statista


日本は電車への飛び込み自殺や事故が多く、対策として多くの駅でホームドアの設置が急がれておりますが、ホームドアの設置には1駅あたり数億円から十数億円ものコストがかかると言われています。そもそも飛び降り自殺など滅多に起こらないイタリアのような国ではホームドアは設置されていません。

もちろんホームドアは視覚障碍者や高齢者の転倒事故を防ぐという目的もありますが、イタリア人は見知らぬ人でも声を掛け合う習慣があり、サポートが必要な人物を見かけたら誰かが手助けをするので、事故を未然に防ぐことができるという背景があります。

これはイタリアのみならず、他の西ヨーロッパ諸国、イギリスなどでも同様、外出先で出会った見知らぬ人と声を掛け合ったり雑談をする習慣があります。

日本では他人とは会話をしない、見知らぬ人と話をしない事を子供の頃から教えられており、赤の他人と会話をする習慣はあまりありません。




自殺者の多い国ロシアはアルコールや鬱の問題が多いと言われています。さらに寒い気候や日照時間の少ない環境の影響も自殺原因として挙げられています。

日本ではアルコールや気候の影響、経済面での問題というよりも、個々の生活環境(職場や学校)や、人間関係による悩みの上での自殺が多い傾向にあります。

このように一概に自殺といっても、国によって要因となる背景は異なります。

多くのイタリア人も、自国の環境に満足しているわけではありません。政治については常に議論を重ね、自国政治家達に対して不満を抱えているイタリア人も沢山居ます。さらにイタリアは日本に比べて失業率が非常に高く、こうした労働の問題、アフリカから来る移民の問題や南北の格差問題など問題は山積みです。

つまりイタリアも日本と同様に多くの問題を抱えています。イタリアの「環境が恵まれている事」が理由で「イタリア人が楽しく過ごしている」といる訳ではない事が分かりました。ではなぜイタリア人は楽しそうなのか?違いは一体どこにあるのでしょうか。


イタリア人は人に合わせない


イタリアの文化的習慣では、家族や友人間でも政治について議論することが頻繁にあります。「食」を大事にするイタリア人ですが、食事の席がディスカッションや交流の場としても使われます。

日本人は近い間柄でも、政治や宗教の話などは時にタブー化され、敬遠される傾向があります。親しい人物へ宗教や支持している政党を明かすことで、今後の関係性が崩れることも考えられます。
日本はどのような場でも「空気を読む」事が重要視されており、その結果人々にとって個性が出しにくく、生きにくい環境が構築されています。

一方、文化的風潮としてイタリア人は自分自身の気持ちや考えを隠したり、他人に合わせたりする事はしません。

イタリア人は、とにかくなんにでもダメもとで果敢にトライする。相手に失礼だとか、恥をかくかもしれないといった心配は、あまりしない。これは明らかに一種の才能で、私はいつも感心している。


(中略)基本的に、身近にある便利なものはなんでも使おうという発想の人たちなので、コネでも、人材でも、資金でも、そこにあれば、可能であれば、それを使わせてもらおうと考える。


*引用元:最後はなぜかうまくいくイタリア人


こうしたアプローチは日本では珍しい事ですが、これはイタリア人特有という事でもありません。世界ではこのような思考で行動する国民が多い国も沢山あり、「慎ましくいる事が美徳」である日本の方が、実は珍しい文化が形成された国といえます。

今までの思考パターンや習慣はほんの少し角度を変えるだけで、多くの選択肢が見えてきます。少し図々しさを持ち合わせてみる、それだけでも生きにくさを軽減する事ができるのかも知れません。

イタリア流の考え方


多くのイタリア人は、自分の人生や生活を尊重しています。
まずは「自分自身を優先させる」。そして、人生を楽しむ事で気持ちにゆとりが生まれ、結果として家族や友人、周囲の人々との友好な関係にも繋がるのです。

これは人間が幸せに過ごすには忘れてはいけない優先順位です。

「自分自身を優先させる」と聞くと一見、自己中心的でわがままな人を想像するかもしれません。これはもちろん自己中心的な行動をするという意味ではなく、自分の心身を労り、自身の気持ちに偽りなく生きるという意味です。

自己犠牲の精神は日本では美徳とされる風潮があります。「お客様は神様」といった精神も日本文化の象徴と言えるでしょう。自分の心身を削り会社に尽くす、自身の感情や気持ちを抑えて、パートナーのために尽くす。
そのような自己犠牲で称賛してくれる人がいるかもしれません。でもあなたがそれを本当に望んだ事でなければ、それはあなたの為にはならないものです。

わがままなお客さんや上司の言う事を全て受け入れる、間違った主張も全て自己を犠牲にして受け入れる、それはあなたの将来にとっては良い選択ではありません。自分が正しいと思う事はしっかりと主張する事が大事です。


幸せなイタリア人のサイクル・・自分自身を優先する→充実感・幸福感・心のゆとりが生まれる→周囲への気遣いや配慮ができる→自分自身も周囲も幸せに

不幸な日本人のサイクル・・他人を優先する事、自己犠牲を美徳と考える→過度なストレス→心身の不調→周囲と疎遠になり、全てに余裕がなくなる→最悪の場合自殺へ(結果として自分、周囲も全員不幸に)


「自己犠牲」は一見美しいようですが、結果としては苦しみを生む精神です。広い目線で考えると、自分自身の気持ち、体調を優先させるという事は自己中心的な事ではない、という点に気付くはずです。

物事の捉え方は人それぞれ


2人のスポーツ選手がいました。同じ競技のライバルで同世代。どんな時でも世間は常に2人を比較します。

1人は己のスポーツに集中する為に生活環境を変え、どんな時間も練習を続け、就寝時間も食事も完璧に管理し、生活の全てを競技にかけたストイック型の選手です。

もう1人の選手は練習が好きではありません。しかし天才型と呼ばれ、常に結果を出します。自身の長所や活かし方を熟知しているので、いつも練習時間は最小限です。練習以外は好きな事や楽しい事へ時間を使います。

日本文化では前者のストイック型が称賛されます。日々の凄まじい努力が感じられ、人々は応援したくなり、後者の「練習が好きではない」というキーワードには、嫌悪感を抱いた方もいるかもしれません。
楽をせず地道に努力をしてきた者は、日本ではとても評価されます。

しかしイタリアのような国で得をするのは後者のような選手です。

後者の選手は「努力をしていない」ようで、実は努力をしているとも言えます。「楽をする」努力、効率の良い方法で自分に合った方法を見つけて結果を出しているのです。

イタリアのようにどんなジャンルでも正規ルートがあまりうまく機能していない国では、物事をスムーズに進めるには、コネによる裏口解決が不可欠である。たとえば4時間待ちの列がある美術館でも、友人の友人を頼れば、簡単に裏口から入れてしまうなどの例がある。


(中略)真面目に行動すると馬鹿を見る、という結果になるのだ。だから、機転を利かして裏口を探れる人のほうが、世渡り上手として尊敬され、むしろ真面目に列をつくって待っている人が「まぬけ」として馬鹿にされるという矛盾した文化が形成されるのである。


*引用元:最後はなぜかうまくいくイタリア人


パフォーマンスを上げ、結果を出すという事は「真面目にコツコツ」と同じことを続けるだけが唯一の方法ではありません。効率良く楽をする方法を探して実践することも、一種の努力の形なのです。



日本流でイタリア人思考を取り入れる


もちろんイタリア的な行動や言動を何でも日本で実践できるという訳ではありません。国が異なれば文化やルールが異なり、それに合わせて行動しなくてはいけません。

日本特有の「厳しさ・真面目さ」は、裏を返せば良い方向へ働いていることがあります。日本の厳しい消費者達のおかげで企業は努力を重ね、日本製品の品質は向上しているとも言われており、道路や公共の場が綺麗に保たれているのも日本の文化による賜物です。

前述の通り、イタリアが完璧な国という訳ではありません。しかし真面目過ぎる故に日本の生活の中で日々疲労しているという皆様にとっては、イタリア的楽観思考は、心の中で少し意識するだけでも非常に役に立ちます。


前述したように、毎日を有意義に生きるには、自分自身を優先させる必要があります。
自分の人生を主体的にコントロールし、誰かの言いなりではなく、自分の正しいと思う事、良いと思う事を優先する事が大事です。

もちろん「他人の評価が気になる」「他人の目を気にしてしまい行動ができない」「怒られる事が怖い」などの様々な感情があるはずです。

日本は他人に対し入れ込みやすい性格の人が多い傾向があり、それによってストーカー行為、粘着的な妨害行為やハラスメント行為も多く発生しています。大半の意見と異なる言動や行動を取れば、あなたを貶めようとしてくる人がいるかもしれません。

しかし他人にどう思われるかに重点を置いて、自己を犠牲にする必要はありません。あなたの人生はあなたのもので、あなたが一番に大切にする必要があります。

他人があなたに対し悪く言っても、それはどうでも良いことです。その評価はあなたにとって意味がありません。人の価値観はそれぞれ異なり、あなたが他人の価値観に合わせる必要はないのです。

例え日本中に嫌われているのではないかと錯覚になったとしても、大した事ではないと自分に言い聞かせてみるのです。日本人は世界の人口のたった1.6%です。世界の98.4%はあなたの事を知らない訳です。
もちろん日本人全員が特定の1人について認知しているという状況はありません。あなたに対して嫌がらせを行ってくる人が10人居たとすれば世界人口比ではたったの0.00000000125%です。

あなたはたった0.00000000125%の妨害者から恐れる為だけに、自身の人生を犠牲にする事となります。

そう考えてみると、あなたは他人の評価について気にしている時間は、無意味であるかもしれないと気が付いてくるのではないでしょうか。



実際に世界へ旅してみよう


いきなりこれまでの固定概念や考えを変えるというのは難しいものです。何より最も効果が高いのは、実際に行動する事です。

留学ではもちろん他国の文化を多く学ぶことができます。しかし例え短期間の海外旅行でも、現地の人々や街並み、些細なことに目を向けて観察するだけでも沢山の気づきが生まれてきます。現地の人と仲良くなれるともっと大きな気付きや発見があるでしょう。

今回文中でご紹介した「最後はなぜかうまいくイタリア人」は30年にも渡りイタリアとビジネスをしてきた著者が、イタリア人の特徴を分析してまとめた情報です。興味がある方はぜひこちらも参考にしてみてください。

筆者からのメッセージ ※2023年11月追記


本記事の公開当時、筆者がイタリアで過ごした経験を元にイタリアについてご紹介させていただきました。
公開から3年以上が経ち、現在はイギリスで生活をしています。最近ではヨーロッパの様々な国を訪れる機会が増えましたが、どの国へ訪れても常に多くの発見があり、久しぶりに日本へ訪れる際にもまた新たな発見があります。

どこの国が一番良いか、一番好きかという質問をよくいただきますが、「一番良い国」など何処にもないというのが筆者の個人的な意見です。
日本社会に疲れ、「どこかに日本よりも良い国があるはずだ」そう信じている方は筆者の意見は残念に思うかもしれません。

当然ですが、どこに行っても楽しい事ばかりではありません。嫌な事も沢山あるでしょう。でもそれもまた経験です。

様々な国を旅する時、必ずしも人間だけにフォーカスする必要もありません。
これまで見た事のない建造物や動物、植物にも出会うことができます。初めて見る光景は、観察していると多くの感動を得られます。


筆者は今年、今まで見た事のない鳥をブルガリアで発見しました。鶴のような大きな鳥が沢山いて、大きな巣を電柱の上に作っているのです。
これは後から聞くと、絶滅危惧種の「コウノトリ」でした。

昔の日本にはコウノトリが沢山生息していましたが、現在では日本には200羽ほどしかいないようです。現代の主な生息地はロシアですが、ブルガリアにも少数生息しているようです。もちろんコウノトリを見るのは筆者にとって始めての経験で、数十羽がたまたま通りがかった小さな町に集まっていることへも驚きがありました。

絶滅危惧種のコウノトリが巣を作り、新たな生命を育てている姿は、言葉に表せられない程の感動がありました。



何かを考える事は大事です。しかし人間はこれまでの固定概念の中の情報のみを使って思考します。状況を変えたい時は、実際に行動してみて、新しい経験をすることが大事ではないかと筆者は考えています。

多くの文化に触れ、これまでの人生で「当たり前」だった事、「常識」だと思い込んでいた事が、「当たり前」ではなかった、「別の視点があったのだ」と気付く時、人はもっと強くなり、成長できると思います。


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